――第十一章――

森であった男の人とわかれたルエ達は、もっと強い敵がいると言っていた森の更に奥へと進むことにした。
奥へ進むと、そこには強そうなモンスターたちが数十体といた。
モンスター達はやはり、全員で襲ってくる様子はなく、まずは数体が相手になる、そういった感じだった。少し、この森のモンスター達は変わっている。
余裕・・・という文字はないが、問題なく倒していく。
この分だともっと強い敵と戦えそうではあった。
「ねぇちゃんたち、もっと奥行こうよ?」
ライラックが提案した。
ルエとライフィルはそれに同意したが、月夜は反対し案をだしてきた。
「あの、ここの敵でまずはチームワークをあげてみてはどうでしょうか?」
今まではさほど強くもない敵を相手にしてきた。だから話しながらでも、一人でも軽がる相手を出来た。
しかし、これ以上奥にすすむと、どれほどの敵がでてくるかわからない。
だとしたら、ここでチームワークを高めておき、これ以上の敵が出てきても苦戦せずに勝てるようにしておこう。
そういうわけである。
「それ、いいですね!」
ルエが賛成した。
「かっこよさそう!!」
ライラックも賛成をした。
「あたしも良いよ?蓮弥にカッコイイとこ見てもらいたしね〜」
ライフィルも喜んで賛成した。が、その言葉でルエがむっとした。

チームワークを深めるためには。
とりあえず、順番に隙を与えずに攻撃をしてみるところからしてみる。
「ていっ!」
「とお!!」
ルエからライラックへの攻撃は順調だった。
が、しかし。
「とりゃっ!!」
ライフィルがロッドを振り、敵に当たると・・・。
カンッ!という音も共にした。
それは・・・。
「僕のヨーヨー・・・」
ライラックのヨーヨーだった。
ヨーヨーを引ききっていないときにライフィルが攻撃してしまったのだ。
「遅いからよ?」
ライフィルに謝罪の気持ちはないようだ。
「それにしたって・・・みてわかるだろ!?」
「隙を与えちゃいけないのよ!?」
口喧嘩が始まってしまった。
急いでルエと月夜が止めに入る。
「ま、まあまあ、落ちついて二人とも!」
「そうですよ!順番を変えてみましょう?」
なんとか二人を落ちつかせ、別の順番を考えてみる。

1時間とやっていると、だんだん慣れていき、順番が入れ替わっても出来るようになってきていた。

「これなら、連続攻撃は大丈夫ですね・・・!」
疲れの色が見えていた。
「そ、そうね・・・」
呼吸が荒い。
「でも・・・疲れたよ?」
休憩を求める。
「次の作戦いくなら休憩しよ!」

一旦下がり、敵のいない場所で一息つくことにした。

「そういえば、もうそろそろお昼だよねー・・・」
木の間からこぼれる光を見上げながら、ライラックが呟いた。
あ。と、小さな声が聞こえた。すっかり、昼を忘れていたのだろう。
「って、ねぇちゃんたち忘れてたの・・・?」
まさかとは思いつつも、ゆっくりとそれを問う。
「こうして充実した修行をするのは久しぶりでしたし・・・つい、うっかり」
月夜はそういうと、小さく「てへ」といった。
「そりゃ、確かにそうだけど・・・お腹空いたよ」
ため息混じりにそういうと、ルエや月夜が少し申し訳なさそうな顔をした。
休憩するつもりが、すっかりわすれていた昼のことを思い出してしまい、それに伴いお腹まで空腹感で襲う。

刹那。

かさ・・・。
草むらを何かがあるくような音がした。
緊張感が走る。
ゆっくりとみんなでかたまり、姿を確認できるのを待つ。

がさがさっ

もう、すぐちかくにいるような音。
モンスター?そう思った。

が。

「よっ!って、ああ、悪い!?」
手を上げて挨拶はしたものの、4人がとても警戒しているのでついつい謝ってしまった。
「あ、あなたはさっきの・・・」
姿をあらわしたのは、さきほどの男だった。
「君達、闘いに夢中になってたから、まさかとは思ったんだけど・・・」
そこまでいうと大きな籠を出す。
「お昼食べてないんじゃないかなー?って」
にこりと笑って皆が座っていた場所の中心であろう場所におく。
そして、再度くるりと4人の方に向きなおす。
「もしかして・・・食べたか?」
少しの間、沈黙があったが、ライラックは抑えきれなかったらしい。
「ううん!食べてないんだ!!」
飛びついてきた。籠に辿りつくなり開けてもいいかとたずね、籠の中を確認した。
「うわー・・・おいしそうー」
4人分・・・いや、5人分にも見える食料が入っていた。
サンドイッチを主とし、多数のおかずが入っていた。
ちらりと中身が3人にも見えた。
「・・・あ、あたしもお腹空いたー!!」
我慢できず、ライフィルもいく。
名も知れぬ人。だが、とても親切にしてくれる・・・。
罠とは思いたくないが、もしものことも考える。
そんなふたりに気付いたのか、男が近づいてきた。
「もしかして、俺って警戒されてる?」
ある意味でとても怪しいと思う。
「怪しいもんじゃないんだけどなー・・・」
そういって頬をかく。
「ある意味とっても怪しいと思うのですが」
つい、すっぱりといってしまった。
「そう、思う・・・?」
やっぱりと言った感じで男が言う。
彼には想像されていたことだったのだろう。前にもこういう経験があるようだ。
「あ、そっか、名乗ってないからか?」
ようやく思い出したらしい。
「普通、ここまで親切にしていたら名乗ったり、名前を聞いたりすると思うのですが・・・」
当たり前のツッコミ。
「まあ、そうだけど・・・困ってたりしたら別に名前聞かなくても親切にしていいと思うんだけどなー」
「そうかもしれないですけど・・・」
しばしの沈黙。
「悪かったよ」
少し凹んだ感じだった。
すぐさまこちらも軽く謝った。
「俺の名前は、ソック。自分じゃ気に入ってないからさ、名乗りたくなかったって言うのもあるんだけど」
「私は、ルエです。いい名前だと思いますよ」
にこりと微笑んで言う。
「月夜と申します。名前には自信を持ったほうがいいです」
月夜もにこりと微笑んだ。
そして。
「むこうの男の子がライラックで、隣の女性がライフィルです」
お互いに名乗りあうと。
「さ、じゃあ食べないか?」
人段落ついたところでにこりと笑顔でさそう。
やっと気を許し、二人も食べることにした。

「それにしても、これって・・・4人分にはおもえないのですが」
月夜が気付いた。
「あ、ああ・・・」
何かを隠してる様子。
「あ、もしかして大食いなんですか?」
ルエが聞いてみる。
「そういうわけじゃないんだけど」
するとソックはゆっくりとどこかを見て。
「一緒に食べてくれないかなーって思う子がいてさ」
その様子に、ライフィルが。
「え?何?恋人とか!?」
「恋人じゃない」
あっさりと否定した。
なんだ、そういってライフィルは食事に戻る。
誰が見ても、わけあり、といった感じだった。

そして、食事が終り、すぐに運動はできないのでもうしばらく休んでからトレーニングに戻ることにした。
その話しをしていると、ソックは是非見学をしたいと申しこんできた。見学くらいなら、と了承をした。


しばらくして、再度チームワークのトレーニングへともどる。
今度はフェイントをかける練習。
やはり、連続攻撃がうまくいっても、フェイントをいれるとなるとうまくいかない。
「うまくいかないわね」
ルエがもらした。
「もっと仲間を信じて、じっくり見てみるといいんじゃないか?」
横からつい口を出してしまった。
「見学してる人は口ださなーい!」
ライフィルはそれに気を悪くしたらしく、反発する。
そして、もう一度やろうとさそう。

だが、やはりうまくいかない。

どうにもみんながみんな、少し焦っているようだった。
時間が決まっているわけではない。
それなのに、何故か焦ってしまう。
気が焦ると、失敗も多くなる。
「ああー!!やっぱり駄目ー!!」
ライフィルが音を上げた。
「あきらめんなよ、ねえちゃん!」
ライラックが励ます。
誰もが心に思っていた口に出さなかったセリフ。そして、誰もが自分に言い聞かせてきたセリフ。
それを二人が会話した。
焦りの色ともどかしさが交差する。

どれほどやっていたか・・・見てるほうも飽きてるに違いないほどの時間が過ぎて居るのは確かだ。
もう、日は傾いている。
だが完成しない。形もできない。
「この辺で今日はやめたらどうかな?」
また横から口を出してしまう。
みんな黙っていた。皆がもう今日は、という気持ちがあったからだ。
しかし、もう一回だけ、もう一回だけ。そんな気持ちもあった。

刹那。

物陰から今までの敵とは明らかに違う大きさもモンスターが静かに、そしてものすごい勢いで飛び出てきた。
4人のすぐ側に着地し、地響きのような声をあげた。
それは耳を塞いでも聞こえるほど大きな声。
「な、なんなのこいつ!?」
疲れて力の出せない腕に無理矢理力をいれる。
ロッドを構え、防御ほどのことが出来るようにしていた。
それに続き、みんなが自分の武器を持ち、構え始める。
見学人のソックだけは、相変わらずの格好で警戒する気もないようだった。
あくまで自分は見学人。そういった感じだった。

合図はなく、闘いはスタートした。

3人で打撃を食らわす。
その間、月夜が呪文を唱え、マナ発動の準備をする。
3人の攻撃は食らっている。ように見えた。
しばらく静かにしていたそのモンスターは3人を一気になぎ払う。
それぞれの方向へと投げ飛ばされた。
「きゃあっ!」
どん。ルエは木にぶつかった。かなりの痛みが全身へと響く。それは、相手の攻撃が相当強力だということだった。
「うぅっっ!」
ライフィルは片手を木にぶつけたがそのまま後方へと転がっていく。
腕をいためた。
「うわああ!!」
ライラックはみんなより軽いため、さらに遠くへと、そしてさらに強く地面へとぶつかった。
3人のことは心配だったが、その3人が稼いでくれた分の時間を無駄にするわけにはいかない。呪文を最後まで言い切り、発動した。
空中に浮かぶ札からすごい光が解き放たれ、モンスターへ命中した。
1mほど後方へと行ったが、はっきり効いた、といえるほどの威力ではなかった。
4人ともが、こんなはずは。そう思っていた。
疲れた体が悲鳴を上げているのだ。
このピンチにどう立ち向かおう?蓮弥や、ガイが居たならこいう結果にはならなかったのでないだろうか。自分達の無力さに苛立ちを感じる。
ゆっくりと3人は立ち上がり、痛みのある体にさらに無理をさせ武器を構えた。
そしてもう一度、モンスターへと立ち向かう。
今度は、連続攻撃で。
口にださなくとも全員がそれを決めていた。
ライフィルが、ライラックが、ルエが、月夜が・・・全力の一撃を食らわす。
効いているようではあったが、さほどダメージを与えているようには思えなかった。
だが効いているならそれを続ける。
これなら少しは勝つ見込みが・・・!!その考えは甘かったのかもしれない。
相手が反撃へと出てきた。またなぎ払われ、四方へ飛ばされる。
みんな、地面に倒れこんでいた。
そして、モンスターはある人物に目をつけた。
すごい早さで向かっていく。
「ソックさん、危ない!!!!」
力を振り絞って叫んだ。
さすがの彼も危ないと感じて構えをとった。
あと数十cmの時だった。
びゅんっっ!!!
ぐしゃああっっ!!
どこからか矢が飛んできた。そしてそれは敵の目へと当たりモンスターは苦痛の声をあげた。
「今、じゃないかなー」
ソックがぼそりと一言。
全員が頷き、さらに体に鞭をうって敵へと飛び掛っていった。
「連続攻撃じゃなくて、フェイントを食らわすんだ!!」
モンスターのすぐ目の前にいるソックが叫んだ。
しかし、そんなことを言われてもあれだけやって成功していない。
成功していないが・・・先ほどの連続攻撃では限界が知れてる。
ならば、フェイントをかけ、少しでも更にダメージを与えられるようにしよう。伸るか反るか賭けに出た。
ルエの攻撃、そして月夜の攻撃が続き、ライラックがヨーヨーを巧みなテクニックで攻撃させるように見せて即刻引く。最後に、ライフィルの全体重をかけたロッドで攻撃をする。
油断が大きなダメージを生み、先ほどよりもぐっと効いている。
そう、成功したのだ。
モンスターはボロボロの体を引きずりながらもすばやい早さで森の奥へと消えていった。
「せ・・・成功・・・したんだ」
言葉をだして確認していた。喜びの声を上げたかったがもうそんな力は残っていない。

東の空は夜のカーテンをまとっている時だった。


宿までもどるにはもう少し体力を回復させてからということで、一行は夜の森を進むことになるが、休憩していた。
「これ、使いなよ」
そういってソックが取り出したのは俗に言う薬草というやつだろう。
「合成屋に頼んで作ってもらったものだから、良く効くとおもうよ」
にこりと笑顔で渡した。
皆はお礼を言って、薬を使う。
痛み止めの効果もあるのだろう、痛みが少し和らいだ。
「そういえば、あの時飛んできた矢、あれはなんだったんですか?」
あの時から気になっていたことを、ルエは勇気を出して聞いた。
「ああ、あれか・・・あれは」
そういうと小さくため息をつく。
「勝手な女神が、ついてきてるんだ」
先ほどより小さな声で言った。
わけあり、そういった感じだった。皆がそれに気付いていたため、誰もそれ以上を聞くことはなかった。

しばらく、静かな時が流れていた。
それを見ているのは月だけ。

「そろそろ、動けると思います」
月夜がそういって立ちあがった。
それに続き皆も立ちあがり始めた。
「いろいろと、有難うございました。私たちはこれで」
ルエが深く頭を下げて礼をいった。
「あ、いや、良いって。そんなしっかりとしたお礼をいわれるのは嫌いだし」
それに、そう付け加え、一呼吸おく。
「面白そうだから、君たちについていきたいんだよね」
冗談にも聞こえる調子で言う。「駄目かな?」これは遠慮気味に言った。
「・・・にいちゃんが強いっていうなら、僕はいいよ」
ライラックがそういって3人の方を向く。
「私も、いいですよ。お世話にもなりましたし」
にっこりと月夜も了解した。
「うーん」と考えこんだが、ライフィルはしばらくソックの顔を見て。
「いいよ、あたしも。かっこいいから」
にこにことなにかを企んでるような顔で了解した。
最後の一人、ルエは考えこんでいたが、自分の番が回ってきてしまったのでしかたなく口をひらいた。
「私は、良いと思うの。けど、蓮弥やガイがなんていうか・・・」
それは確かにそうであった。自分達だけで仲間にしてしまうには少し問題がある。
4人が黙ってしまったが、ソックは軽く「じゃあ、聞いといてくれればいいよ」といって、自分のいる宿と部屋番号を教えた。
それに4人とも頷き、自分達の泊まっている宿へと帰ることにした。

が。

「って、気が付けば村が小さいんだから同じ場所だよな」
と笑いながらソックが言った。
しかも。
「隣の部屋でもあったのよね、考えてみれば」
ルエは呆れながら言った。

とりあえずはわかれ、部屋へと入っていった。
「おやすみなさい」と言う会話をして。


部屋に戻ると、ガイが一人で居た。
「遅かったじゃねえか」
少しだけ顔をこちらに向けて言う。
「つい、修行に夢中になっちゃって・・・」
それだけの会話をすると、静かな時間となってしまった。
が、ここで言わなければならないことがある。
勇気を振り絞って言おう・・・。とは思うもののなかなか口からでない。
刹那。
「ちょっとちょっと、頼みたいことがあるんだけどね♪」
珍しく、ライフィルが口をきった。
「なんだ?」
くっつくな、という感情も含めながら不機嫌に言う。
「一人、仲間いれない?」
腕を掴んでお願いをしてみる。
無言でガイはその腕を振り払おうと必死に試してみるが、効果がない。
「ねーねー、お願い〜v」
最後にハートマークまで付けてのお願いをする。
こんなふうにお願いをするライフィルは初めてみた。
「どういうヤツかもしれねえのにそう簡単に返事が出来るか・・・!」
正当な反論。
すると突然ライフィルは手を離す。それと同時に急に軽くなったガイの腕がちょっと遠くまで行く。それにともないガイはバランスを崩し、少しこけた。
恥かしそうに立ち直り、せき払いをして。
「勝手にしろ」
そう言った。
ライフィルは喜んで部屋を出て隣の部屋のソックの元へと向かった。
「すごいね、ライフィルねえちゃん・・・」
別の意味でのすごい、を含め、ライラックが呟く。
月夜がしずかに、「ええ」と返事を返した。
残る問題は蓮弥だが、彼に限って相当反対することはないだろう。ルエはそう思っていたが、やはり心配なのでソックにはあとでそのことを言うことにした。



=back= / =top= / =next=






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送