――第九章――

―月夜の家―

「へぇ〜。結構大きな家ですねぇ」
玄関前でルエがいう。
「そんなではないですよ、私の家は一階だけですから」
「日本の家みたいだ・・・」
蓮弥が一言漏らした。
「ニホンって何?にいちゃん」
隣にいたライラックが聞いてきた。
「俺の住んでいた国の名前さ」
ふーんと、流すような返事を返した。
それを聞いていた月夜が
「蓮弥さんの故郷と似ているんですね。それは、興味深いです」
少し間が空いて
「そういえば、この世界に日本なんてところ、ありましたっけ?」
「蓮弥はちょっと特別でね、異世界から来たみたいなの。原因とかわかってないけど」
ルエの返事にそうですか、と申し訳なさそうに返した。
その重苦しい感じの空気に気がついた一同は少し黙っていたが蓮弥が入ろうとピリオドを打った。

入ると、みんなは驚いた。
玄関入ってすぐに段差があった。そこで月夜はここで靴を脱ぐ事を教え、不思議ながらも全員靴を脱いで上がった。
不思議がっているみんなに月夜は一言説明をした。
奥に入っていくとおおきな部屋に案内された。もちろんそこは畳が敷かれていた。おおきさは、9畳。
真中にはテーブルが一つ。周りには座布団があった。
月夜がそこにすわるよういってから、お茶をとりに行った。
「手馴れてるね、蓮弥」
蓮弥の国と似ていると聞いてずっと蓮弥の行動を観察していたライフィルがいった。
「まあ、同じ感じだからね。違いはない。かな?」
そのあと少し雑談していた。
そして、お茶の準備を終えた月夜が入ってきた。
みんなの前にお茶と和菓子を置き、どうぞといった。
みんなはこれは何かときいた。その質問にも月夜は丁寧に答えた。
「それは、和菓子といいます。和菓子は、アンコが主となって出来ているお菓子でとても甘くておいしいです。
甘い物、苦手な方いますか?」
そして、みんな一口食べた。
「変わった歯ごたえ、っていうか。不思議な味。あ、でもおいしいよ!!すっごく」
「初体験ですから、そういう感想があって良いと思います。美味しいならいいんですよ、ライフィルさん」
少しゆっくりした所で、月夜がある話を切り出した。
「あの私、人の前では丁寧口調で話すよういわれて育ってきました。一人のときや、育ての親の前ではこんな口調はしてません。このスタイルは変える気はありません。
ただ、たまにボロが出るかもしれません。気にしないでくださいね」
「きびしいね」
ライフィルが素直な気持ちをいった。そして、それに月夜はそうですね、と答えた。
夕方になり、月夜は買出しへと向かった。ルエ行った。
ライフィルは縁側にでて夕日を見ていた。
「蓮弥も来てよ。二人でロマンチックな時を・・・」
ライフィルが振りかえると蓮弥はテーブルに顔を付けていた。
「ライフィルは元気だな・・・」
蓮弥は一言つぶやいて黙った。それを見てライフィルはちぇ〜。と吐き捨て別のターゲットに目を向けた。
「ガイが来る?」
ガイはあっけなくそれを無視した。
「僕が行ってあげようか?」
ライラックが突っ込んできた。
「チビはいらない」
たった一言残して夕日を眺めた。
そしてルエと月夜が帰ってきた。すぐに2人は夕飯の準備へととりかかった。
エプロン姿で現れたルエは蓮弥の横に蓮弥を見る体制で座って聞いた。
「疲れたの?」
「うん、まあ。今までなれない環境で寝泊りしてたからさ。急に疲れがどっと出たよ」
月夜も現われた。
「では、蓮弥さん。お風呂先に行ってきたらどうでしょうか?わいてますよ」
「そうさせてもらうよ」
「服は籠の中に入れてもらえれば、明日にでも洗濯しておきますから」
ありがとう、そう言ってお風呂へと向かった。
「あ、僕もいい?蓮弥にいちゃん!」
「ん?まあ、いいけど。うるさくするなよ!疲れてるんだから」
「わかってるよ!」
そういって2人はお風呂へと向かって行った。
それから1時間ほど経って料理が運ばれてきた。既に風呂からあがっていたライラックが目を輝かせた。
テーブルには豪華な料理が次々を運ばれてきた。それはまるで、一流旅館のようだった。
箸の使い方がわからないみんなに月夜はフォークを渡した。
ルエは、せっかくだからといって箸の持ち方、使い方を教わった。
楽しい夕食のあと、少しのんびりして順番にお風呂へ入って行った。日本風の風呂のわからない人達に丁寧に入りか方をおしえ、月夜は片付けえと向かった。
特にはなしは無かったが何となく蓮弥は台所に向かった。
蓮弥の方をちらっとみて、月夜は早く寝てはどうかと誘った。それに蓮弥も同意し、寝る準備をしてもらった。
深々と頭をさげ、礼をいって就寝した。
再び台所で片付けをした。

ルエは日本風に興味を持ったようで、いろいろと月夜に話を聞いた。
ライフィルは縁側が気に入ったようで月を眺めていた。
ガイはガイで庭を借りて少し、迷惑にならない様に修行をしていた。
ライラックは蓮弥の隣で就寝した。

そして、みんなが寝た頃、月夜も風呂に入って自分の部屋に帰った。
「はぁぁぁぁ、久々のお客さんでつかれちゃったよぉ」
そういって布団に倒れこんだ。
仰向けになってぼんやり眠けを感じた。そして、少し考え事をした。
「あの人達についていったら私の過去、わかるのかな」
そして、就寝した。

次の日。
その日も快晴で今日一日何事も無く過ごせるような天気でした。
いつもと同じ様に朝早く起きて、朝ご飯の仕度をしました。
いつもと違っていたのは朝ご飯の量でした。
たったそれだけ。それだけでしかない。はずなのに―――

男子の部屋と女子の部屋に
「おはようございま〜す!!」
元気いっぱいの声が部屋に響いた。
それから朝ご飯のを食べて、旅支度にとりかかった。

太陽が一番高く昇った頃、その悲劇は起こりました。

縁側のほうの庭から大きな爆発音が聞こえてきました。
それが、悲劇の合図。
「な、なんなんだ!?」
そういって蓮弥とガイが外に出た。たちこめる煙が風に乗って消えた。
そして、そこに人が立っていた。
「オンナヲ、ヨコセ」
一言そういった。もちろん返事はNOである。
ライラック、ルエ、ライフィルも庭に出てきた。
「ソウカ、デハシカナイ」
猛スピードで蓮弥の元に向かってきた。なんとか槍で防御し後に押される。
連続的攻撃を槍でガードするが、いくつか傷を負う。
横からガイの攻撃が飛ぶ。
敵はそれを間一髪でよけ、後方へさがる。
蓮弥もとへルエがかけよる。
「今度はあたしね!!」
そういってライフィルはロッドを振った。
それにライラックも参戦する。ガイも援護する。
蓮弥も参戦し、ルエも隣につく。

しばらく戦闘が続いてから月夜が外に出た。
「みなさん!大丈夫ですか!!?」
飛び出してきた月夜に蓮弥が叫んだ。
「月夜!!来ちゃ駄目だ!!」
そう叫んだ時には遅かった。敵は標的を変え、月夜のもとに向かっていた。
敵は腕をナイフへと変形させ、飛びかかる。
構え、ナイフと化した腕を振り落とす。

一瞬、時が止まったようだった。

月夜の視界は、赤へと染まった。
それは、自分の血でないことはすぐにわかった。
血を出したのは―――――

蓮弥だった―――――――

甲高い叫びが辺りを包んだ。
自分の目の前で倒れ込む蓮弥。頬を伝う涙は止められない。
止められない。どうすればいいのかわからない。
ただ、怒りが込み上げてくるだけ。
目にいっぱいためた涙が頬を伝う頃には月夜の怒りが敵に猛威を振るっていた。
怒りによって解き放たれたマナ(魔力)が敵の心臓を貫き、跡形もないほど粉々になる。その肉片は天へと召され、浄化されていく。
自分の中にあった全ての力を一時的に解き放った月夜はその場に倒れこんだ。

辺りが一瞬だけ静かになって、人の倒れるような音がした。
ルエが膝を落としていた。手で顔を覆ってたくさんの大粒の涙を流していた。
すぐに蓮弥のもとにガイが向かって怪我の様子をみる。
ライラックが隣につく。そして
「どうなの?蓮弥兄ちゃんは無事なの?死んでない?」
涙をこらえながら聞くライラックの頭にガイは手を乗せ少し撫でた。
ルエとライフィルのほうをむいていった。それは、残酷なものだった。
「息は、ない。医者にいっても直せないだろう」
「そんな。そんなのって・・・」
ルエはそういって両手を地面につけて下を向いた。涙が地面にしみこんでいく。
そっとルエの肩に手を乗せてライフィルが聞く。
「絶対に助かる方法は無いの・・・?」
涙が頬を伝わって下に落ちる。
「ないわけじゃない。無いわけではない、が・・・」
「可能性があるんだったらかけてよ!!ガイ兄ちゃん!!」
「しばらく時間がかかる。俺の体力にもよるが、ざっと考えて最低でも1週間だな」
「何を、するの?ガイ」
恐る恐るルエが聞く。
「俺の体力、マナを蓄積させ、蓮弥の体に入れる。一気に蓄積されたエネルギーを解くと蓮弥の体が壊れかねない。だから徐々に解く必要がある。
徐々に解くコントロールは俺がしなければならないからな、最低でも1週間かかるんだ」

まずは蓮弥の出血を止める必要があり、ガイが魔術で出血を止めた。
月夜は自分の部屋に運ばれた。

その日は、静かに過ぎていった。

次の日。
今日は朝からどんよりとした暑い雲が広がっていた。
雨が降りそうな天気だった。

朝ご飯をルエが準備をしてみんなで食べた。相変わらず静かだった。
月夜は寝たまままだ起きない。
ガイは蓮弥の手当てに当たっている。朝ご飯も食べなかった。

太陽がそろそろ昇りきる頃に月夜が降りてきた。
「おはようございます」
昨日の元気は何処にもなかった。
「あ、もう。こんにちはですね。すいません、お昼ご飯作ります」
苦笑して台所へ向かおうとした。
「自分を責めてない?月夜は悪くないよ」
ルエが月夜の後に語りかけた。
首だけ振りかえって。
「少し、責めてました。いえ、責めてます。私の、この力がなければって」
「責めないで。みんな同じ気持ちだから。それに、蓮弥はきっと大丈夫だから」
優しいルエの言葉に感涙し、頬に涙の筋が出来た。
「わかってます。わたしだけじゃない事。わかってるんです。私も、出来る限りの事がしたい」
それからは誰も口を開かなかった。

その日も、静かに過ぎていった。

次の日、雨が朝から降っていました。
ガイは相変わらず何も口にしませんでした。
私は、神社でお祈りをしました。毎日欠かさず。

そして、月日は過ぎ、あの日から1週間経ちました。
しかし、その日は目覚める事はありませんでした。

それからまた3日経ちました。

ガイは、蓮弥の布団に頭を乗せて静かに寝ていました。
わたしは、寒いだろうと布団をいちまいかけました。
横で少し、動いた気がした。それは気のせいではない事は次の瞬間にわかりました。
「おはよう、月夜」
蓮弥がそう、声をかけてくれました。
わたしは嬉し過ぎて声が出ませんでした。涙も止められませんでした。
蓮弥はそっとわたしを近づけて頭を撫でてくれました。
数分の間そのままの状態でした。
わたしはそっと立ち上がって、
「みんなに知らせてきます」
そういってその場を後にしました。

「ガイも、有難う。俺、強くならなきゃいけないな・・・」
蓮弥は呟いて前を真っ直ぐ見た。

ルエとライフィルとライラックのいるところへいって月夜は大きな声で叫んだ。
「蓮弥が、蓮弥が目を覚ましましたよ!!」
その知らせを聞いてみんなが蓮弥の居る部屋に向かった。

布団から出て、着替え終わった蓮弥がみんなを迎えた。
ルエは相変わらず嬉しさのあまり抱きつく。
「そ、それだけは勘弁してくれよ、ルエ」
顔を赤く染めながらいった。
その騒音でガイも目を覚ました。

その日の夕食はいつもより賑やかだった。
「もう一杯!!」
「もう、これで何杯目ですか?蓮弥さん」
苦笑しながらご飯をよそる月夜。
「僕もぉ!!」
「ライラック、蓮弥のマネしない」
そうルエが注意する。

その日の夕食は笑いが絶えなかった。

―夜―
「みんな、ちょっと話があるんだ」
そういって蓮弥はみんなを集めた。

蓮弥は強くなりたいことを告げた。
それに対して、なにか情報があったら教えて欲しいといった。
自分の最大の能力を引き出したい。どういった。
それに対してみんなは誰一人として反対はしなかった。

「それなら、ローズお婆様に聞けばいいですよ」
月夜がいった。
ローズは不思議な能力を持っていてその人の能力を今より倍以上に引き出せると言う。
どうやるのかその方法はわからないが、とにかく強くなれると評判であった。
しかし、それは一部の人間であって、通常の人間は力を引き出せないという。
引き出すまでの力がない。そういうことである。

「なら、次の目的地は決まったな!」
蓮弥はスっと立ち上がった。

次の目的地。
ローズの居る村へ―――――――――



=back= / =top= / =next=






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送