――第五章――

ふふふ〜ん♪
蓮弥をどうやって起こしてあげよっかなぁ〜。
そんなことを考えつつ蓮弥のベッドに向かう。
蓮弥は布団にもぐりこんだまま、まだグッスリと眠っていた。
よし、キスしてあげよっかな!!
ずばりと決めて蓮弥のうえに飛び乗ろうとした。
が。
「あつい!!」
そういってガバ!!と、飛び起きた。
バフ!!
ライフィルは今まで蓮弥の顔があった枕元に突進した。
それに気付いて後を振り向く。
「な、なにしてるんだ?ライフィル・・・。」
状況を飲みこめぬまま問う。
「蓮弥のばかぁ・・・。」
「な、なにがだよ・・?」
し〜んとした沈黙。
「せっかく蓮弥にキスしようと思ってたのに〜!!!」
蓮弥、赤面。
「す、するなよ・・・。」
「ああ〜!!もうこんな時間!!」
それにつられて蓮弥も時計を見る。
「なんだよ、まだ6時じゃないか」
「ルエって女の子、見つかったの!!」
蓮弥の顔ギリギリまで顔を近づけて怒鳴った。
「み、見つかったのか!!?」
「そうよ。さぁ、はやく行かないとまたわからなくなっちゃう!!」
蓮弥はベッドから飛び降りて個室に入っていった。
「あら、着替えるの?ここでもいいじゃない。」
すると個室から。
「女の子がいるまえできがえられないって!!
だいたい、俺の住んでた世界じゃ女子の前で着替えたら変態あつかいだよ」
「そうなの。まぁ、ここでも普通そうよ。」
「じゃぁなんでそんなこと言うんだよ」
「冗談言っただけだもの」
あきれてものも言えなくなった。

宿屋の前。
「ここがそうなのか?」
「うん、昨日ちゃんと確認したもの」
少しの間、宿屋を見つめる。
と。
「ねぇ、そんなのだからはぐれたんじゃない?」
図星。
「悪かったなぁ、ほら、いくぞ」
ふてくされながら宿屋に入ろうとする。
「あ、まってよ!!」
あわててついてくる。

どんな子であろうと、蓮弥を渡すわけにはいかない!!
勝手にルエにライバル心を抱くライフィル。
「えっと、205・・・だったよな。」
答えが返ってこない。なんだかどうでもいいのでノックをする。
コンコン。
しばらく待ったが出てくる気配がない。
まだ寝てるのか?
あまりノックするのもしつこい男だと思われるだろうし。
刹那。
隣の部屋から男が一人出てきた。
「まさかお前が蓮弥、か?」
突然知らぬ男に名前を呼ばれて驚きを隠せない。
「だ、誰なんだ・・・?」
「ルエって女に仲間になってくれ、と頼まれたんだ。
条件付でな。」
と、その会話を終わらせるように扉が開いた。
「・・・!!?」
ルエが出てきた。
「れ、蓮弥!!」
「ルエ・・・。」
2人は見つめあい、再会を喜ぶ。
そして、それをジャマする者もいる。
「えっと。ルエちゃん?あたし、ライフィル。よろしくね。」
わざと大声でジャマをする。
「は、はじめまして・・・。」
少しびっくりした様子で挨拶をする。
そして。
「あ、この人はガイっていうの。無理いって仲間になってくれるように頼んだの」
「そうなのか」
挨拶がきちんと終わっていないうちにガイは歩き出す。
「俺は外にいる。早くこないと先にいくぞ」
そういって階段をおりて外へ出ていった。
「なんなの!?激ムカツク。
蓮弥とは大違いね!」
「じゃあ私は身支度をしてくるね」
「おう」
この人々は沈黙がすきなのか。
と、思えるほど
またまた沈黙。又、静寂?
その静かさを終わらせたいがためなのかライフィルが口を開いた。
「蓮弥、ルエちゃんって彼女・・・?」
「な!何言い出すんだよ!!そんなわけないだろう。
ついこの前知り合ったばっかりなのに・・・。」
「そうなんだ。
じゃあまだフリーなわけか。」
そうつぶやいて隣の蓮弥に目を向ける。
そこに蓮弥の姿は無かった。
「あ・・・れ・・・?」


「お、みんな集ったな。」
ガイの次に外へ出ていた蓮弥が2人を向かえた。
「ごめんね。これ、もってくるのに時間かかっちゃって」
そういって蓮弥の前に出されたのは短剣だった。
「蓮弥にはこれかなぁ?って」
短剣を見つめ、しばし考えこむ蓮弥。
と、2人の間に入りこんできたライフィル。
「残念だけど、蓮弥には、短剣よりも絶対ロッドよ」
「違うわ!短剣よ!だって私の前で蓮弥は剣をうまく使って見せたもの!!」
「わっからずやね!私の前ではロッドを上手く使ったわ!!」
そういって蓮弥の知ったかぶりバトルが始まった。
蓮弥はため息を一つついた。
その隣にいたガイにポツリと一言もらした。
「短剣、ロッドより、俺は槍のほうが使えると思うけどなぁ。」
「なら、買いに行けばいいだろう。とにかく行動しろよ。
こいつら、いつまでもトークバトルすんぞ。」
「そうだな、このままいくと血がとびちりそうだもんな。」
男2人、女の激しいトークバトルを見て呆れる。
「じゃ、俺買いに行って来るよ。」
走り出そうとした蓮弥に急いで問いかける。
「おい、金もってんのか!?」
「・・・。」
むごんで金を渡した。

武器屋
「これに、しようかな?」
デザインが気に入った。
たったそれだけの理由。
武器をそんな選び方しちゃいけなんだろうけど、どう選べばいいかわからない。
「それ、やめなさい。」
聞き覚えのある声だった。
振り向くとそこには地図をくれたあの例の女性がいた。
「え、なにがいけないんですか?」
ため息を一つ。
「あのねぇ。君、何がって。デザインできめたでしょ?」
ずばりと言い当てられ何も言えなくなり冷や汗をぬぐう。
「え、ええとぉ。まぁ。なんというか。」
「ちょっときなさい。」
そしてその女性は耳もとでつぶやく。
「いい武器売ってる店、教えてあげるわよ」

「ここ、なんですか?」
ついたところは何とも言えぬほどの古く、いまにもこわれそうな店だった。
「そう。さ、はやくきなさい。」
そういってさっさと中へ入っていった。
それに続いて急いで店の中へ入っていった。
その女性は足の速さを遅くすることもなく、槍のコーナーへ行った。
「あの、質問。いいですか?」
女性の横にやっと追いつき疑問を問う。
「何?」
やはり足を止める事もなく、遅くする事もなく、マイペースに歩く。
「名前は・・・?」
「そっちから名乗りなさい。」
「蓮弥です。」
「カフェ・トランスよ。カフェでいいわ」
物事をはっきりと言う女性だ。
「さっきのは何処が悪かったんですか?」
その質問を聞いてピタ、と足を止める。蓮弥も足を止める。
そしてカフェはため息をひとつ。それも大きく。
「あのね、見てわからなかったの?」
「はい・・・。」
「・・・まず、刃が欠けてる。
なのに値段が高い。
丈夫ではない。」
ズバズバと欠点を上げていく。
「わかった?大外れなのよ!」
「そうだったんですか!すいません」
話しているうちに槍のコーナーへきた。
ぱっと決めて槍を取る。
「これがいいわね」
蓮弥の前に出されたのは飾りがあまりない槍だった。
「これが一番切れ味がいいの。文句あるの?」
彼女の迫力には勝てない気がした。
「じゃ、それで。」
「お金は?」
「これだけですけど」
カフェはそのお金を見てため息を一つ。
「え、もしかして足りないんですか?」
そうじゃないわよ。彼女のいつもの声より小さい声で言った。
「十分よ。おつりがくるぐらいよ。」
そういってお金を受け取りレジの方へ向かった。
「そうなのか・・・。」
少し、淋しくなった。
自分のいた世界とは違う。何も同じではない。
そう考えていてふと疑問がわいた。
言葉って俺には日本語に聞こえるけど、みんなは俺の言葉。どう聞こえているんだろう。カフェさんにでも聞いてみようかな?
そんな事を考えているうちに会計を済ませたカフェが戻ってきた。
「はい、これ」
槍が渡された。
「あ、ありがとうございます」

店を出た。
「じゃ、私は仕事があるから。これで失礼するわ」
そういって行こうとしたカフェを蓮弥は呼び止めた。
「あの、一つ聞いて良いですか?」
くるりと振り返った。
「なに?」
「言葉が俺の住んでた所と全く一緒に聞こえるんですけど、どうなんでしょう?」
「さぁ、なぜでしょうね?私にはわからないわ。」
「そうですか・・・。」
この人に聞けば全てがわかる気がした。だから、残念だった。
「そういうのは専門の人に聞いたら?」
そう言い残してさっさと行ってしまった。

宿屋前。
「あ、帰ってきた!」
宿屋の前に置いてあるベンチで待っていた。
「ただいま」
「槍、なの?」
ライフィルが尋ねてきた。
「うん、二人の前で使った武器を合わせた感じかなぁって思ってさ」
「そう、ごめんね。蓮弥。」
そっと寄ってくるライフィルに妙に拒否反応がでた。
ライフィルが寄る分だけ蓮弥は離れていく。
みかねてガイが蓮弥を救う。
「次の街へ行こう。もう時間がない」
「あ、ああ!行こうぜ!」
すっとんでガイの隣へ行く。


街をでて次の街までの間には小さな森があった。
そこは強暴な獣が出やすいと有名でもあった。しかし、未だに襲われた者はいない。
とても不思議な森だった。
しかし、真実をしろうとした者達は戻ってこないという。だからといって襲われたとは限らない。
そういう理由でこういう噂があるのかもしれない。

「ここは気を付けたほうがいいわよ」
そうあっさりと言ったのはライフィルだった。
「アレの噂ですね」
「まぁ。でも真実を探ろうとしてるわけじゃないから襲われないんじゃない?」
不機嫌な彼女は余計な言葉を言わない。
「どうしたんですか?そんなに不機嫌で♪」
「いいえ!別に!!(このあま!ふざけんな!!)」
不機嫌なライフィルとご機嫌なルエ。
2人についていけない男2人は早歩きで女2人と距離をおく。
森にはいってどのくらいの時間が流れたのだろう。
そう思ってしまうほど同じ様な道が続く。
森の中は物騒な噂など無いように鮮やかで神秘を感じされるほどだった。

ちょうど中盤にさしかかった時のことだった。
急に神秘を感じさせていた森がぬめっとした空気に包まれた森と化した。
薄暗く、心なしか変な匂いまでしてくる。
思わず口元をふさぎ立ち尽くしてしまう。
「な、なに・・?ここ・・・」
一言ポツリといった。
「これが噂のアレなわけか・・・。」
ルエの一言を無視するかのようにライフィルは言った。

心なしか楽しそうにも聞こえる。
「アレってなんだよ?」
「アレってね、アレよ。」
はっきりと言わないライフィルをここぞとばかりに攻撃するルエ。
「わからないのならどういえば良いんじゃないですかぁ?無理しなくってもいいんですよ〜♪
ガイだっているしね!」
「ち、違うわよ!馬鹿にしないでくれる?」
「じゃあ、教えてくださいよ」
「言えるわけないでしょ!?ここでいったら―――――・・・」

ばん!!

ライフィルが言い終わる前に大きなおとがした。
「な、なんだ!?」
そこをみた。だが煙が邪魔をして良く見えなかった。
何時の間にか女子2人は蓮弥の後ろに隠れていた。
だんだんはれて行く煙の中に人の影があった。
それは少年のものだという事がわかった。
そして。
血だらけの少年が木にもたれかかっていた。体に獣による傷が数ヶ所あった。
「大丈夫!?」
そういってルエはその男の子のほうにかけよる。
と、男の子が口をうっすらと開いた。
だが、小さ過ぎて聞こえない。
「え?なに?良く聞こえない」
そういって聞き返す。
「ねぇちゃん、避けろ!!」
今度は精一杯の声なのだろう。蓮弥達にもはっきり聞こえた。
そして―――
ルエの背後に黒く大きな影が―――――



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