――第三章――

チュンチュン・・・。
鳥の鳴き声に起こされた。
起こされて、日本かと思ったけど、姉の声がしない。
ここは、”ポプルスウィルドのコンジェンクチオ村”なんだよな・・・。

上体を起こした。
窓の外には大自然が広がっていた。

コンコン。
「はい?」
ガチャ、扉が開いた。
「おはよう、蓮弥。ぐっすり眠れた?」
ルエだった。
「おう、おはよう。ルエ。」
蓮弥はベッドから出た。
「蓮弥、これ。あなたの服よ?」
「え?おれの・・・服?」
「うん。その服じゃ変でしょ?」
ああ、あいづちし服を取った。
「じゃ、下で待ってるからね?」

ガチャン。

扉が閉まった。


一階
「蓮弥君、おはよう。」
「おはようございます」
階段からおりてきた蓮弥の服はこちらの世界の服だった。
「変じゃ、ないかな?」
苦笑しながら2人に意見を求めた。
「うん。良く似合っているじゃないか」
「素敵だよ、蓮弥」
「ありがとう、2人とも。」
着なれないデザインの服に対する不安がなくなった。
一段落をつき、ルエは椅子をひいた。
「さぁさぁ、食べましょ♪」
その言葉にうなずき、2人も席へとついた。

食後。

「ルエ、身支度はできたかい?」
「・・・。うん。」
2人の様子を見ていると、うらやましく思えた。
「お父さん、一人で平気?」
「ああ。平気だよ。」
蓮弥に顔を向けた。
「ルエを、よろしくお願いします。」
「はい。」
「お願いね、蓮弥」



旅立ちの時
「いってきます。」
「いってらっしゃい」
「気の済むまで、話しろよ」
ルエは大きく首を振った。
そして笑顔で蓮弥を見た。
「ううん、いいの。さ、蓮弥行こう♪」
その笑顔に答えるように蓮弥も笑顔で答えた。
「ああ。この世界の事わかんないから案内頼むな?」
「うん!」


そうして、2人の旅は始まった。


村を出て少し歩いてから、2人はあることに気がついた。
「ねぇ、蓮弥。何処行くの?」
「・・・。それ、俺も考えてた。」
2人は顔を見合わせ、苦笑した。
「そういえば、俺、今ここで獣とか出てきても闘えないぜ?」
「ふぇ?どうし――――・・・。」
言葉を最後まで言う前に理由を理解した。
「ま、まぁとりあえず・・・・。
武器を買うか・・・。」
「武器・・か。でも蓮弥は何を使いこなせるのかしら?」
その問いには本人にもわからなかった。
「まぁ、とにかくは見たいな・・・。」
「そうね、そうしなきゃ始まらないよね?」
しっかりとした一歩を踏み出し、ルエは蓮弥に振りかえった。
「そうと決まれば。
行く所は隣街!!」
気合充分といった様子で片腕を大きく空へ向かって振り上げた。
「隣街は大きいから私と離れないようにしてね?」
「そんな子供じゃないって。」

そんなこんなで隣街到着。

街への入り口を後にしてルエは元気良く
「サムトリカ大陸で、一番大きな街”ラエティア”で〜す!!」
「ん?ちょっとまてよ?
ここの大陸の名前、サムトリカっていうのか?」
「うん。そうよ。
でも、そんな細かい所まで気にしないでよ。
男の子でしょ?」
そういって街に入っていったルエの後姿をみつつ、蓮弥は一言つぶやいた。
「大陸の名前ぐらい気にしたっていいだろう。しかも。男の子なんだからって・・・。
関係ないだろう・・・。」
つぶやきが終ると走りもせず、ルエの後を追った。

が。

見失った。

「やべ、あいつ何処いったんだ?」
自然と早歩きになっていた。
「そこの子。」
女性に声をかけられた。
「へ?
俺ですか?」
「そうよ」
声をかけてきたのは仕事をテキパキとこなしそうな雰囲気の女性だった。
「な、なんですか?」
「異世界の子?」
「え、ええ。そうですけど。」
なんだかややこしい事になりそうな予感がした。
「そう、一つ注意しておくけど。」
一呼吸の間があった。
「歩き方、不自然よ。」
「え、どこがですか!?」
声がでかくなってしまった。
「なんていうか、こう・・・。
キョロキョロしすぎ。
顔が不安でいっぱい。
せっかくいい顔してるのにそれじゃ台無しよ。
それに、田舎くさい。」
田舎くさい、には反応した。
「い、田舎くさい・・・。」
「そうだ、これ、あげるわ」
そういって地図をわたした。
「それじゃぁね。」
彼女の言葉はどことなく、やる気が感じられない感じだった。

地図をわたされたものの、目的地などないので意味がない。
一回は武器屋に行こうとしたが武器屋の数が多すぎて何処が良いのかわからない。
それにお金を持っていない。
どうすることも出来ず、彼はただただ街を歩きまわっている。

角を曲がった。
刹那。
「きゃっ!!」
「うお!!」
人とぶつかった。
「す、すいません・・・!」
蓮弥は苦痛を顔にだしながらも謝罪した。
「こちらこそすいません。」
ぶつかってきた彼女は頭を下げて誤った。
頭を上げた彼女は、しばらく蓮弥をじっと見つめた。
「な、なんですか・・・。」
「あなたに決めた!!」
突然のセリフにたじろいだ。
「な、何が・・・?」
「ちょっと私の恋人役やってくれる?」
「え!?恋人役・・・!?」
「そうよ、駄目なの?」
冗談なのか本気なのか、わかりにくい口調だった。
「・・・って、言われてもなぁ・・・。」
「・・・。」
彼女は黙りこんで、下を向いた。
あきらめたか・・・。と思った。
が。
「もう、いいから!!とにかく恋人っぽくして!!」
逆だった。
その勢いに圧倒され、蓮弥は仕方なくすることにした。
「わかったよ!!黙って隣歩いてるだけだからな!!」
「うんうん、ありがとう♪」
すこぶるご機嫌になった。
そんな彼女についていけず、蓮弥はただ苦笑するだけだった。
「あ、そうだ。名前は?」
「え。名前?
蓮弥だよ。」
「そう、あたしはライフィル。よろしくね、蓮弥♪」
「あ、ああ」

街中、今さっき出会った女の子と歩く。
歩く。歩く。歩く。
「なぁ、ライフィル?」
「ん?なぁに?」
ふと浮かぶ疑問。
「恋人役やって、どうするんだ?
誰かに、追われてるとか。そういうのじゃないのか?」
「そうよ。まだきてないだけ。」
ぐっ、と腕を握られた。
「こうしておけば、街中の男はもうあたしに近づかないだろうしね?」
「?」
彼女の言ってる意味がよくわからなかった。
「ほら、あたしって可愛いでしょ?
だから・・・・」 そういってうだうだと自分について語り始めた。
(自分で可愛い、何ていうか?)
刹那。
目の前に体の大きな男が現われた。
「見つけたよ?ライフィル・・・。」
その言いかたに、ぞっとするのを覚えた。
「なんで、ばれたのかしら・・・?」
小声でたしかにそう言った。
「ばれたって、何がだよ?」
その声が聞こえたらしく、男は言い放った。
「ヅラをかぶったからってばれないって思ってんだろう!!」
「し、失礼ね!!地毛よ!!」
(そういう問題か・・・?)
2人のやり取りにはついていけず、そっぽをむいてため息をひとつ。
と。
「きゃ!な、何すんのよ!!」
その声に振り返った。
彼女は腕をつかまれ何も出来ない状態になっていた。
「女の子に、暴力ふるき!!?」
こんな状況であっても、ライフィルは強気だった。
限界まで達していることも、わかった。
「手、はなせよ。」
「ああ、いいぜぇ?」
そういって手をはなした。
「そのかわり・・・。」
どん、と彼女を押した。
「きゃ!」
飛んできた彼女を抱きとめた。
「てめぇらまとめて、ぶっ飛ばしてやるよ・・・!!」
「ち、ちょっと、蓮弥。なにか武器持ってないの!?」
さすがの彼女からもあせりの色が見えた。
「これから買いに行こうとしてたところだったんだよ!!」
小声で相談している二人を大きな影が包み込んだ。
それに気付き、とっさにライフィルを自分の後ろへと移動させる。
蓮弥の肩から顔をだし、蓮弥にあるものを渡した。
「これ、使ってみて」
そう言い渡された物は金属製のロッドだった。
飾りはなくただの棒でしかなかった。
何か魔法が使えるような、宝石のような物体もついていない。
「ただのロッドじゃないんだからね!!」
なんだか、自然と構えが取れていた。
「やるっていうのか?」
そういって男は大検をだした。

勝負は開始された。
合図はなく。静かに。

最初は男からの攻撃。
相手の動きが鈍い、いや、そう感じた。
蓮弥は余裕でその一撃をかわすと相手の背後に回りこみ、ロッドを大きく振り上げ
そのまま全体重をかけた攻撃を背中へとくらわせる。

当たった。

その一撃を合図かのように男もスピードをあげ、より力を入れて襲ってくる。
一撃一撃を棒でかわしながら後方へと追いやられる。

後は、壁だった。

「もう逃げられないぜぇ?」
(くそ、このまま・・・。このまま・・・。)
蓮弥心の中で何かが弾けた。
「終われるかあぁぁぁ!!!!」
ロッドが眩しい光を放った。
「う、うそぉ・・・。」
ライフィルは開いた口が閉まらないほど、驚いていた。
蓮弥は凄まじい速さで相手の腹部へと入っていった。
自分でも、信じられぬ速さで。
ロッドの先端には槍の刃のようなものがついていた。
魔法ので創った刃だった。
もちろんの事蓮弥は意識していない。

ドグシャッッ!!

鈍い音と共に、赤い赤い血が飛び散った。

はぁはぁ。
息が切れていた。
「蓮弥!!さっすがぁ!!」
彼女もまた、飛びついてきた。
蓮弥は心の中で
ここの世界の女の子って、みんなそうなのか・・・?
疲れで何も言えず苦笑するのみ。
意識すら、なくなっていくような気がした。
いや、どうやら意識がなくなったようだ。


目が覚めるとどこかの部屋にいた。
「お、目が覚めたか♪蓮弥く〜ん」
「誰のまねだ?」
「さぁ。そこらへんの男のひとのマネかな?」
トス、と蓮弥がいるベッドの上に腰を下ろした。
「蓮弥はさ、なんであんなに強いの?」
「俺にもよくわからない力なんだ。気がつくと勝手に使ってて。」
「ふ〜ん。
でも、あたし。強い男性って好きよ」
蓮弥はふと思い出した。
「あ〜!!!」
「ど、どうしたの!!?」
急に大きな声を出した蓮弥につられて更に大きな声を出した。
「い、今何時なんだ!?」
「え?今?うんと・・・・。7時だけど?」
ベッドから飛び起きドアの方まで走ろうとした。
ベッドから出たのはいいが一歩を踏み出すと頭がくらっとし、そこに膝をついた。
「だめよ。寝てなきゃ!!」
「でも、あいつとはぐれたっきりなんだ。」
「あいつ・・・?」

今までの事をすべて話した。

「そうなの?いいわ。その、ルエって女の子探してあげる!!」
「顔とかわからないだろう?」
「これでも、人探しは得意なのよ?」
そういってそそくさと出ていってしまった。
蓮弥一人を残して・・・。




「もう、蓮弥どこいっちゃったのよ・・・?」
暗い街中。
ルエは一言つぶやく。



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