――第二章――

意識がかすかに戻った。
暗い暗い水の中。
どっちが上でどっちが下なのかもわからない。
水じゃなくて宇宙の中のような気もする。
やっぱり、死んだのか・・・?

姉ちゃん、俺もう帰れないかもしれない。どうする事もできないみたいなんだ。

心の中で独り言をつぶやく。

刹那。

『大丈夫?』

そんな声がした。

え・・・!?


瞬間的にはっきりと意識が戻った。

周囲の様子はあきらかに蓮弥が住んでいた所とは違った。
自然が多く、空が清みきっていた。
なによりも、彼の前に立っている女性は、
服がおかしかった。
彼の世界では変な目で見られそうな服だった。
漫画の世界だったら許せるような、変わった服だった。

「ねぇ、大丈夫?」
呆然としている蓮弥に不思議そうに話しかけてくる。
上体を起こして彼は聞いてみた。
「ここって、何処かな・・・?」
変な質問なのだ、彼は真剣な顔をするわけにもいかなく、苦笑した。
「ええっと。コンジェンクチオって村だけど?」

外国か・・・?

「あ!もしかして・・・!」
急に彼女が叫んだ。
「な、なんだよ?」
彼女は目を輝かせながら手を祈る時のように組んだ。
「あなたは、その服から察するに、異世界の方なのね!?」
「へ?え、いや。うん?」
彼女の突然の発言に蓮弥はひるんだ。
そんな彼を無視し、彼女は続けた。
「私達の住む世界「ポプルスウィルド」にある有名な予言の中にこんな一文があるの。

無数に割れた海から”セイン”をきた者が現われ、無数に割れた海を
一つの大きな海へと戻すであろう。
時は、止まらぬ、光源の破壊と向かう。

その先は全然意味不明なんだけど、学者達がこう言ってたの。

無数に割れた海、とは500年前に分離された大陸のことで、
セインって言うのは別世界の服でそれを着た人が現われる

って。
で、あなたが着てる服、ズバリ、セインでしょう!?」
それを聞いた蓮弥はあきれながら答えた。
「残念だけど、この服、制服っていうんだけど?」
「セインとセイフク、似てるじゃない!?」
「・・・セイ、だけな」
静寂が。
少しの間、あった。
その静寂を破ったのは彼女だった。
大粒の涙を流しながら、うつむいたまま。
「あなたが、そうじゃなかったら・・・。私達の世界は・・・。一生・・・このままなの・・・?」
意味のわからない事いわれて、泣かれても。
蓮弥にはまったくわからない。
如何すれば良いのかも。
「泣くなよ、頼むからさ。俺だって自分の置かれてる状況が全くわからないんだからさ。」
なんだか、心の中が熱くなった。
どうしようもならないのに、不思議と何かをしようとしていた。
背後の森で気配があるのを感じた。
振り向くと、見た事もない獣がいた。
4本足で、顔はライオンのようなたてがみがあり、目が光っていた。
えものを捕えたら一撃で砕いてしまいそうな歯。
襲いかかろうとしているようだった。

なんなんだ!?
彼女だって何も出来なさそうだし、俺も何も出来ないし。
逃げるしかない!?

「きゃぁ!?」
悲鳴をあげて彼女は蓮弥の後ろに隠れた。
俺に、どうしろって・・・。
刹那。
足元に剣が飛んできた。
一体何処から?
そんな事を考えている暇ではなかった。
やるしかない!!
両手で剣を握って上に大きく振り上げた。
体の奥から力が沸いてきた。
無我夢中で剣を振るった。

ガウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!?

なんとも言えぬほどの大声で吠えた。
声は割れていて、ひどく悲しそうで辛そうだった。

ごめん。

自然と心の中でそう言った。
気がつくと彼女は目を輝かせながらこちらを見ていた。
それをみて、我に返る。
と、
剣の重みで体制が崩れ、剣につられて倒れた。
「いてっ!!」
「だ、大丈夫!?」
急いで手を差し伸べた。
その手に捕まり立ち上がった。
「よかった、無事で」
男のこえだった。近づいてきているようだった。
「うちの娘を助けてくれてありがとう」
「剣を投げたはあなたですか?」
「ああ、そうだよ。私は剣を使えるほど体が強くないからね」
男の横にいって彼女が言った。
「私のお父さん。お医者様なの。すごいでしょ?」
あ、と小さく声をだした。
「自己紹介まだだったね。私はルエ。ルエ・ランフィス。これでも短剣使いなのよ?」
「のワリにはびっくりしてなかったか?叫んでたし。」
眉を寄せた。
「そ、それは。
あたしだってあんなに大きな獣見た事なかったもの」
「そうなのか。」
ルエは突然蓮弥の前に出てきた。
そして。
「名前、教えて?」
「俺は。蓮弥。神谷蓮弥。」
不思議そうな顔をした。
「名前が後ろなの?」
「ああ、俺のすんでた国では普通だよ。」
ふ〜ん、軽く流して父の横へ行った。
「わたしはルエの父でべオーク。」
べオークは蓮弥に近づいた。
「蓮弥君、ここは危険だ。わたしの家に来なさい。」
「はい」

ルエの家

家に着くなり、べオークは説明を始めた。
「蓮弥君、君は予言の中に出てくるセインを着た者だとわたしも思うよ。
君は剣を持てないはずなのに軽々と持って闘った。
君には不思議な力があると思うんだ。」
「お父さん、ちょっと良い?
あのね、蓮弥。500年前に急に大きな大陸は割れたの。
これは異常だって。学者達は口をそろえてそう言ったわ。
何か、起こるんじゃないかって。
現実にそれは起こったわ。今まで森の奥にいて人には危害を加えない獣達も人を襲うようになった。
それだけじゃない、あちこちで魔術師が行方不明になってる。
奇怪な事件も起こってる。いいたくないけど、物や壁に人が飲まれていく事件が起こったり。
とにかく、異常なことがあちこちで起こってるの。
それを救えるのは、あなただけだと思うの。」
それをきいて蓮弥はこころで誓った。
「俺が本当にセインを着た物かどうかはわからないぜ?
でも、俺もやってみたい。俺にできる事はやってみたい。
俺を必要とするのなら、やってみたい。
そう、思う。」
それを聞いてルエは。
「ありがとう!!」
蓮弥に飛びついた。
「ちょ、おい。くっつくなよ!!」
顔を赤く染めた。



運命が、動いた。



   夜
コンコン。
「はい?」
「失礼するよ、蓮弥君。」
蓮弥の部屋にべオークが入ってきた。
「ルエのことなんだけどね。」
辛そうなかおで、しかも小声で言った。
「不思議な子なんだ。」
意外な一言。
「あの子は、ある日ヤラの。あ、ヤラって言うのはルエの母だよ。
ある日ヤラの部屋から光が溢れていたんだ。
わたしはびっくりしてヤラの部屋にいそいで入っていった。
するとヤラの上に光の珠が浮かんでいた。
何処からともなく、声がしたんだ。

この子を大切に育ててくれ

とね。
それから一年、ルエは生まれた。
ヤラと一緒にわたしは大事に育ててきた。
ところが、ヤラは。」
静寂した。
「あの、もういいです。
ルエのこと、わかったし。」
「そうは、いかないよ。
聞いてほしいんだ。聞いてもらわないといけないような気がするんだ。

ヤラは、死んだんだ。
その死に方は、悲惨なものだった。
まるで、一瞬にして時が流れていったようだった。
彼女だけどんどん、中の空気が抜けたようにシワシワになりそのまま。」
蓮弥は何も言えずにただ、顔を下に向け苦痛の表情になるしかなかった。
そしてべオークも苦痛の表情を浮かべながら続けた。
「あの子は泣き叫んでいた。
わたしもこれがあの子の頭から離れる事はないだろうと思っていた。
しかし、あの子は次の日何もなかったかのように笑顔だった。
母の存在もなかったように・・・。
あの子は辛そうなわたしの顔をみて、

お父さん、どうしたの?なにかあったの?

と言ってきた・・・。」
反射的に顔が上に上がった。
驚きを隠せなく。
「わたしも驚いたよ。
でもわたしはどこか心の奥で安心した。
あんな死に方を忘れてくれて、辛くないだろうと。」
何かが蓮弥の心のなかで弾けた。
涙が、頬を伝った。
「そんな、こと。あっていいのか・・・?」
考えられない。わからない。
如何して良いのかもう、わからなかった。聞きたくなかった。
「頼む、蓮弥君。
あの子を頼む。一緒に行かせてやってくれ。」
「何も、出来ないかもしれません。
それでもいいんですか?」
「ここに居させたくないんだ。
頼む。」
「わかりました。
俺がルエを、守ります・・・!!」

心に誓った。こんな悲しい事、もうあってはいけないと
そう思ったから。
平和にしてやりたい。俺の使命なら、絶対やってやる・・・!!




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