――第十五章――

「結構かかりそうですね、ここまで」
月夜がソックの開く地図を覗きながら言う。
「そうだな〜・・・」
眉間にシワを寄せながら答えた。
ここからそこまでの距離を計算していたためだった。
「だいたい・・・四、五時間かな」
「そんなにもかかるんですか?」
「人里から相当離れていないと、すぐばれる可能性があるから」
やはり自分らのいる場所がそうそうばれては困る。
そこで、相手の奴らは人里から離れた場所に構えていると思われる。
月夜とソックはその場所についてしばし二人きりで意見を出し合っていた。

「はぁ〜・・・」
そんな二人のやりとりを後ろに、ルエがひとつため息をついた。
「ん?どうしたんだい?」
蓮弥が突然のため息に疑問を持ち、問う。
「え?ううん・・・なんでもないの」
即座に造った笑顔で言う。
それが逆に怪しい。
「なんか・・・気になるな〜」
「ほ、本当になんでもないの」
同じような笑顔でまた否定をする。
そんな二人のやり取りにライフィルは腹を立てていた。
「あーもー!!」
自分を差し置いて蓮弥は何をしているか!という身勝手な感情で怒っていた。
「気になるな・・・なんでもないの」
と、二人の真似をしてみる。そして・・・
「じゃ、ないわよ!!」
怒るのであった。

「・・・ライフィルねえちゃんって・・・面白いね」
苦笑しながらライラックが言う。
「・・・そうだな」
ガイが静かに同意した。
そしてもうひとり、不機嫌そうにしている人物がいた。
「そういや、セスラもなんか・・・不機嫌」
「・・・だな」
そんな空気が嫌なのか、辛そうにライラックは言った。
だが、ガイはどうでもよかったらしく、たいした返事はしなかった。
「何が気に食わないんだよ?」
ライラックが勇気を出してセスラに聞いてみた。
「関係ない」
誰に対してもそっけない返事だ。
「ちぇ・・・そんなんじゃ友達できないぞ」
「別に欲しくない」
一言一言にカチンとくるライラックだったが、皆もセスラの態度に我慢をしているわけだ。自分もそうしなければ・・・。
とは思うものの・・・。
「なんだよ、その態度!!」
「・・・」
反発されたが、セスラは何も言わない。
「何考えてるかわからないし・・・」
怒りをぐっと抑えているような声だった。
「それじゃ仲間の意味がないよ!!」
「う・・・うる・・・さい」
ここまで言われたのは初めてだったのか、いつものような態度は崩れていた。
そして、ライラックは怒って先頭へと立った。

そのケンカは皆に気付かれていたらしく、すこし険悪なムードが漂ってしまった。
これからカフェを助け出しにいくと言うのに、今のこの状況では助けられるものも助けられないだろう。
「困ったな・・・」
「セスラちゃん、何を思ってるんだろう」
蓮弥の呟きにはさほど関係のない言葉をルエは言った。

「今はお姫さま、じゃなくて旅の仲間なんだぜ?」

ソックが前方にいるセスラに少し大きめの声で言った。
だが、それにセスラは反応しない。


それから、目的の場所につくまであまり会話はなかった。


「この辺りに奴らの・・・」
地図に書いた丸の中に入った。
そして中心部まできて、蓮弥が呟いた。
だが、この中心部まで来たが、それらしき建物はない。そのうえ、周りにすら何もない。
「違ったのかな?」
ルエがまさかとは思いつつもその疑問を言葉にする。
「それはないんじゃないかな?少なくとも、カフェさんがもってるパソコンがあるはずだし・・・」
蓮弥が言う。
「ぱーそなる・・・なんとかじゃなかったっけ?」
ライフィルがふとした疑問をぶつける。
「え?ああ、いや・・・俺いたの世界にもパーソナルコンピュータがあって、その略称がパソコンなんだ」
自分のいた世界ではパーソナルコンピュータという名称ではあまり呼ばない。その略称で呼ぶ。その癖が出てしまったようだ。
「ふーん。でもそっちのが呼びやすいね」
ライフィルが気分よさげに言う。
「・・・どうかしたんですか?」
月夜が誰かに言っている。
蓮弥は自分に言われていることではないことを知ってはいたが、ついついその方を見てしまう。
振りかえったその眼前には、静かにどこかを指差すセスラがうつった。
「・・・なにか、あそこにある」
皆そちらの方に目を向けるが、何も見えない。
「何も、見せませんが・・・?」
「もっと良く見ろ!」
今度は強く言う。もう一度、そちらの方へと向けた。
よく目を凝らしてみると、そこには何か黒い物体が存在した。

警戒しながら、その物体へと近づくことにした。

黒い物体はだんだんその正体を明かしていった。
「あれ・・・カフェさんのパソコン?」
ある程度まで近づくと、それがパソコンであることがよくわかった。
そしてそれは、何度か見たことのあるもの・・・。
カフェのだった。
「なんで、こんなところに?」
ゆっくりと近づいていって、蓮弥はノートパソコンを開いてみる。
そこには、文字が書いてあった。

-この真下に-

とだけ書いてあった。
「この下っていっても・・・」
「どうしろってのよ」
ルエの呟きにライフィルが続けた。
「これは・・・どこかにここの辺りにあるはずのドアを開くスイッチがあるはずだ」
皆が悩んでいるのを見て、ソックが仮説をひとつ。
「ね、ねえ・・・にいちゃん」

ライラックが何かに恐れている様子で口にした。
「ん?わかったのか、ライラック」
蓮弥が聞いてみる。
「にいちゃん、後ろ・・・後ろ!!」
振るえる指で蓮弥の後ろを指す。
それにつられて一同がそちらの方へと向けた。


「も・・・・モンスター!!?」


ライフィルが叫んだ。
渇いた砂の色をした、固そうな体をしている。
それは、ゴーレムだった。
今まで闘ってきたモンスターは獣のようなものばかり、未だにみたことがなかったそのゴーレムに蓮弥は驚いていた。
「こういう奴がそのカギの持ち主って可能性もあるんじゃねえか?」
ガイが意見をだした。
確かに、それは在り得る話。
守り神、のようなかたちでゴーレムがいる可能性は充分だ。
「まあ、とりあえずこいつを倒さないとだな」
あまりピンチ、という感じではない口調でソックが言う。
ゴーレムは遠くまで響きそうな叫びを上げた。
それが、戦闘の合図となった。

月夜とガイは即座に皆の後方に行き、呪文を唱え始める。
「とりあえず二人のために時間稼ぎだ!」
蓮弥が全員に指示をする。
そして、槍を構えゴーレムへと向う。
相手に隙を与えないためにルエもすぐにゴーレムへと走り出した。
「蓮弥の次はあたしがよかったのにー!」
そう叫びながらライフィルがゴーレムに向う。
少々慌てながらライラックも行く。
ソックとセスラは両サイドに分かれ、遠距離攻撃を仕掛ける。
連携プレイに、ゴーレムはひるんでいた。
この調子で・・・!
体力の続く限り、二人が呪文を唱え終わるまで・・・。

「みなさん!避けてください!!」
月夜は準備が完了したらしく、全員に避けるよう叫ぶ。
それを聞いてさっとよける。
避けてできたその道を札の光が一気にかけていく。
それはゴーレムへと。
ゴゴゴゴゴゴゴオオオオオッッ!!!
凄まじい音と砂煙があたりを包み込む。
風が吹いてその煙をさらっていった。
そしてそこには先ほどの攻撃で形の崩れたゴーレムが表れた。
だが、ゴーレムはそのまま立ちあがり、攻撃をしようとしてきた。
「俺達で食いとめるんだ!」
月夜の元へと行かせないように足止めをしようとした。
だが、ゴーレムの動きを槍では防ぎきれない。
「蓮弥!」
急いでルエが援護に向う。
「ルエだけに良い格好させないんだからね!」
ライフィルも援護に向った。
「また僕だけ取り残されてる」
その三人の様子を見ながら呟いた。
そうそうぼうっとしてられないのでライラックも援護へと向う。
だが、そのライラックの判断は自分に危機をもたらす事になってしまった。
ゴーレムが三人を振り払い、すごい勢いで迫ってきていたのだった。
「う、うわわ!」
あまりにもすごい迫力で、攻撃をすることもできなかった。
あと、少し――・・・

ガアアッッ!!!

突然ゴーレムは動きを止めた。
「・・・え?」
目を瞑っていたため、一体何が起きたのかさっぱりだった。
「ぼーっとしてるな」
そういってぐいっとひっぱられた。
「せ、セスラ・・・?」
みると、自分を引っ張るセスラに遠くで銃を持ったソックが見えた。
そして、その銃は撃ったばかり。
どうやら、ソックが攻撃で止め、その間にセスラがゴーレムの前からライラックを助けたようだ。
「・・・まさか、セスラに助けられるとは思わなかったよ」
少し照れながらライラックが言った。
「一応仲間だからな」
「ありがとう!」
「ぼさっとしてるとまた攻撃されるぞ」
お礼に照れていたのがわかった。
それを隠すようなセリフを言って自分の持ち場へと戻る。

「おい、どいてろ」
ガイが静かに言う。
それでも、きちんと仲間全員に伝わっている。
ゴーレムから大分全員が避けていた。
「食らえ」
とんでもない量の水が渦を巻き、トルネードのような脅威でゴーレムへと襲いかかっていった。
それにゴーレムは巻き上げられそのまま消え去った。
「っく〜!!やっぱガイにいちゃんすげえ!」
相変わらず、ライラックはガイの強さに夢中だった。
「ゴーレムじゃなかったら、俺だって強いのに」
負け惜しみのその言葉を小さく蓮弥は呟いた。
「しかたないよ、蓮弥」
ルエが優しくフォローする。
「そ、そうそう!蓮弥が強いのは、あたしがよーくわかってるからね!」
最近ルエに先を越されてばかりながら、それに負けないような言葉でカバーにまわるが
「でもまだ修行の成果だせてないんだよな」
ため息を一つして、そう言った。
「で、でも前より強くなってるって言うんだから、そりゃあ強くなってるのはあたしわかってるから、うん!」
ライフィルが全力でそう言う。
「あ、ありがとうライフィル」
その妙な熱意にちょっと引きながらもお礼を言う。
「いいのよ、いいのよ、あたしと蓮弥の仲じゃない!」
「仲間以上仲間以下ですよ、ライフィル」
じとっと見ながらルエがツッコミをいれる。
「失礼ね!恋人以上よ」
頬を少し赤らめてそういうと、ルエが違います!と全力否定をする。
そして、ライフィルとルエの口喧嘩が始まった。
「ま、まあまあ二人とも・・・」
そういって喧嘩を止めようとするが、意味は無さそうだ。

「三角関係ですね!」
その三人から少し離れた場所で月夜が楽しげに言う。
「うーん、いや、あれはただライフィルねえちゃんが勝手に入ってきてるんだと」
どうみても、どう考えても蓮弥とルエが両思いであることがわかる。
それが三角形になるはずがない。
ライフィルが無理矢理入っているだけなのだ。
「ああいうのは違うんですか?」
「物凄く違うよ、ねえちゃん」
天然ボケを平気で食らわせてくる月夜にライラックは少しツッコミに疲れていた。

「おい、喧嘩してる場合か」
そう言うと、セスラは指を指した。
指された場所に目を向けると平らな地面に四角い出っ張りがあった。
近づいて見ると開きそうな感じだった。
開いてみようと、手を近づけた瞬間。

ガガ・・・

自動的にそれは開いた。
中には小さいボタンが二つ、並んでいた。
「どっちかが、開くでどっちかが閉るなんじゃない?」
ライフィルが覗きこむなりそういう。
「じゃあ、適当にこっちを押してみるか」
こちっと押してみる。
すると、ゴゴゴゴゴという音と共に地下に続く階段が現れた。
どうやら当たっていたようだ。
「一発だね、蓮弥」
ライフィルが少し驚きながら言う。それに頷いて答えた。
「じゃあ、皆」
そういって振りかえる。皆は頷いて答える。


いざ、助けに・・・!!



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